さ…

 

 

町の 銭湯
老人に 囲まれ
「腰まで浸かるも辛い」
と 言った

石鹸を 忘れた
俺の 前に
小さいかけら
置いてくれた

お互い
譲れない 悩みを
帰りの バーガーショップで
確かめた
その 思いを……
「今度も また 俺がおごるよ」

さ…… 友よ
懐かしい 歌と
かみ合わない 好みを
朝まで 語ろう
静かに……


「次の冬を越えれば もう 東京」
と お前は笑って 話し

それに 隠れた
お前の 本当が
哀しいから 今
歌にした

東京は 寒いか?
人は お前に
声 かけてくれるか?
控えめな あの お前を
淋しいから
遠くで 歌にした


あの 日々も
やがて 止まり
二人は 口を
きかなくなった

垢のような
汚れた面が
お前に 増えた
気がした

“許さない自分”を
弱い と罵る日々は 今
“許せない”
その 答えを
見出す前に お前は
去った

さ…… 友よ
懐かしい 歌と
かみ合わない 好みを
朝まで 語ろう
静かに……


いつか また 会えたなら
風呂に行こう

今度は 背中 流すよ

いつか また 会えたなら
風呂に行こう

 

 

                                2009.6.8作

 

 

 

 

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