船乗りたちの歌



晴れた太陽の下で 出帆を迎えた男たちは
逞しい腕を 妻へ 子へ 友へ
惜しみ涙を ぐっと飲み干した
担ぐ酒と それぞれの命と等価の 写真 手紙
船長に自分の割符を托して 大洋へ躍り出た

潮風を受けて 西へと進路を採る商船
煌めく波頭に 時折 跳ね出る魚の群れ

太陽に輝く 波を待つ海鳥
羽ばたきを高くして
朝日を 歌った


海鳥たちが鳴きに荒れた 途端に押し寄せる曇り空
高くなる波に 船は弄ばれて
彼らの表情に青が注した

唸る荒風の声 甲板を叩きつける 波と雨
船は揺れに揺れ 舳先を狂わせ
舵の自由を奪った

疲労に塗れた彼らに襲いかかる長い夜
逆向く波風を 明日への希望の歌に変えて

泣くな 我が里よ 歌が聞こえるだろう
俺たちの誇る船は いつでも負けない
明日になれば また 海鳥が鳴くだろう
歌え 飲め 笑え 騒げ oh ラララララ


    遠く 古い海から 朝日を連れてきた 覚悟の歌
    その後の彼らの消息の如何を
    語れる者など 逝ってしまったが
    数多くある歌の中で 埋もれて なお輝く 夜明けの歌
    今日も海原に 心地よい風を運ぶは 海鳥

 

 

                                2009.2.5作

 

 

 

 

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