君が声

 

 

「結婚するの」
って嬉しそうに云った あの日

確かに君は
「ごめんね」

を目に溜めた

ありがとう
さよなら
僕はゆくよ
君を忘れる 場所へゆくよ
 


 
「作家ではこの人が好きだな」
って言う君の
はねた 短いあの髪が
僕は大好きだった

ありがとう
さよなら
大切な人よ
僕たちが 見た風と
仕合わせに……

 

 

 

日々と日々を
結んで また
今日が終わり

いつの間に 僕は
少し やせたみたい

土曜の晴れた朝
偶然 町で見かけた

子どもの手をひく
君はもう 風の中

ありがとう
さよなら
僕はゆくよ
君を忘れる 場所へゆくよ

ありがとう
さよなら
いつまでも 変わらずに
この青い 宇宙の底
響く 君が声

 

 

                              2013.10.29作

 

 

 

 

星になる ←   → 陽溜の渦